豊胸術
トランス女性の胸郭と軟部組織条件に合わせ、個別化したインプラント計画で自然で調和の取れた胸部輪郭を目指します。
多くのトランス女性にとって、胸部は体のカーブ変化だけでなく、性別肯認と自己像に関わる重要な要素です。
トランス女性とシス女性では胸郭構造や軟部組織条件が異なるため、豊胸は単純な挿入ではなく個別設計が必要です。
豊胸は単なるサイズ増加ではなく、体型バランス、柔らかな曲線、性別肯認の調和点を見つけるための手術です。
トランス女性豊胸での解剖学的ポイント
シス女性と比較して、トランス女性では胸郭が広い、大胸筋が厚い、上胸被覆が薄い、乳頭間距離が広いなどの特徴を認めることがあります。
そのため、インプラント幅・突出度・留置層・谷間設計は、外側流れや縁の視認、輪郭不自然を防ぐ目的で個別評価が必要です。
- 胸郭が広い
- 大胸筋が厚い
- 上胸の軟部組織被覆が薄い
- 皮膚の伸展性・張力特性が異なる
- 乳頭位置が外側寄り
- 乳頭間距離が広い
- 乳輪径が小さい
- 乳房下溝が不明瞭
- もともとの乳腺量が少ない
切開法の選択
切開法は乳輪サイズ、胸部条件、インプラントサイズ、瘢痕希望を踏まえて選択します。
- 腋窩切開(Transaxillary):腋窩しわに瘢痕を置くため胸部瘢痕を避けやすい一方、左右対称性と位置制御に高い技術が必要です。
- 乳房下溝切開(Inframammary Fold):視野が広く剥離精度を確保しやすく、下溝再建にも有用で、広い胸郭や大きめインプラントで安定しやすい傾向があります。
- 乳輪周囲切開(Periareolar):瘢痕を乳輪境界に馴染ませやすい一方、乳輪が小さい場合は大きいインプラントに不向きなことがあります。
インプラント表面と留置層
現在はシリコンインプラントが中心で、柔軟性、支持性、胸郭寸法、被覆厚を考慮して選択します。
- スムースタイプ(Smooth):柔らかく自然な可動性が得られやすい一方、症例により偏位や bottoming out リスクに留意が必要です。
- マイクロテクスチャード(Microtextured):表面性状により位置安定性を高め、回旋や偏位リスク低減が期待されます。
- 大胸筋下留置(Submuscular):上胸被覆を増やし、縁の視認や波打ち感を抑えやすく、被覆の薄い症例で有用です。
- デュアルプレーン(Dual Plane):筋下と乳腺側の調整を組み合わせ、自然な上胸勾配と下極ボリュームの両立を目指します。
トランス女性では、純粋な乳腺下や筋膜下のみの留置は、縁の視認や波打ち感、輪郭不安定を生じやすい場合があります。
術中イメージ

術後ケア
- 術後早期は腫脹、つっぱり感、圧迫感、軽度疼痛がみられますが、通常は徐々に改善します。
- 医師指示に従い固定ブラやサポートウェアを着用し、位置安定と形状維持を行います。
- 術後数週間は激しい運動、上半身の筋トレ、強い上肢負荷を避けます。
- うつ伏せ寝や胸部への直接圧迫を避けます。
- 創部治癒、インプラント位置、形状変化を定期的に外来フォローします。
- 最終的な柔らかさと形状は数か月から半年程度かけて安定します。
- マッサージやケア方法はインプラント種類と医師方針に合わせて調整します。

想定される合併症
すべての手術にはリスクがあります。被覆厚、胸郭比率、軟部組織支持性を個別評価することで、合併症低減と長期安定性向上を図ります。
- 血腫
- 感染
- カプセル拘縮
- インプラント偏位
- Bottoming out
- 左右差
- リップリング
- 創傷治癒遅延
- 感覚変化
- インプラント破損・漏出
- 外側流れや谷間不足
ポイント
- 胸郭が広く大胸筋が厚い、上胸の被覆が薄い場合は、インプラント径とポケット設計を再計算する必要があります。
- 乳頭が外側寄りで乳頭間距離が広い場合は、谷間と胸部中心線の設計を同時に行う必要があります。
- 切開法、インプラント表面、留置層を一体で選択することで、自然さと長期安定性の両立を図ります。